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介護施設での事故

 介護施設の介護職員が目を離したときに母親が転倒して怪我をしました。施設の責任を問えないでしょうか。

 ご質問の場合,介護施設利用契約(以下「利用契約」といいます。)上の債務不履行に基づく損害賠償を請求することが考えられます。

 損害賠償請求が認められるためには,①転倒が施設の利用契約上の義務違反により発生したこと,②この義務違反により利用者に損害が発生したことが必要です。

1 義務違反

 施設には,利用契約上,入所者の安全を確保する義務があります。これを安全配慮義務といいます。

 この安全配慮義務は,利用契約に明確に定められている場合もあります。利用契約に明確に定められていない場合であっても,一般的に施設は利用契約に付随して利用者の生命及び身体の安全を配慮する義務があると考えられています。

 しかし,単に介護職員が目を離したことをもって,転倒が施設の安全配慮義務違反により発生したとはいえません。安全配慮義務違反は,具体的に利用者の転倒が予見でき,その転倒を回避することが可能であったにもかかわらず,回避しなかったことをいいます。例えば,利用者が直近に転倒したことがあれば,その利用者は再度転倒することが考えられることから,その利用者の転倒が具体的に予見できたと考えられやすくなります。そして,施設としては,過去の転倒の状況を踏まえ,転倒防止策をとり,転倒を回避することが可能であるといえ,それにもかかわらず転倒防止策をとらなかった場合に安全配慮義務違反となります。一方,施設が利用者の転倒の危険があることを予見し,利用者を安全な場所に座らせたにもかかわらず,数十秒間目を離したすきに利用者が自ら動き出し転倒したような場合には,転倒を回避することができなかったとして,安全配慮義務違反はなかったと考えられる方向に傾きます。

 安全配慮義務違反があるかどうかは,施設が認識していたか又は認識すべき個別の利用者の心身の状態等を前提として,利用者がどの程度転倒する危険性があるか,これに対し施設はどの程度の防止措置をとらなければならないかという具体的事情に左右されるものとなります。

2 損害の発生

 損害としては,転倒による怪我の治療費等があげられます。また,転倒し怪我を負ったことについての慰謝料や,さらには,後遺症が生じた場合には,後遺症を負ったことについての慰謝料を求めることもできます。

 もっとも,そもそも足腰等に既往症がある場合には,施設側の義務違反だけでなく,既往症の影響もあって転倒してしまった,あるいは転倒による怪我が既往症の影響によって大きくなってしまったと考えられる場合があります。その場合には,転倒により生じた損害が施設の義務違反だけではなく,既往症の影響によっても生じたと考えられ,賠償額が減額される場合があります。

3 最後に

 以上のように,施設に損害賠償請求ができるかどうかは,転倒が義務違反によるものか,義務違反によりどの程度の損害が生じたかという具体的事案に左右されます。このような事故が生じた場合には一度,弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。 

 

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