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過量販売解除権
~枕を買いすぎてしまった~【Aさんの相談】
私は,75歳の一人暮らしです。年金生活を送っています。寝具業者が私の自宅にやってきました。私は,ちょうど枕を購入しようと思っていたため,その業者から快眠枕を3万円で購入しました。1か月後,同じ業者が自宅にきて,「そろそろ新しい枕を購入すべきですよ。」と勧められ,私は,新たに3万円の快眠枕を購入しました。その後も,何度も同じ業者が自宅にやってきて,次々と枕を購入してしまいました。昨日も同じ業者がやってきて,既に10個も枕があるにもかかわらず,断り切れず,さらに3万円の枕を買わされてしまいました。今,自宅に枕が11個あります。枕はもう要りません。枕はお返ししますので,今まで支払った金銭の一部でも返還してもらえないでしょうか?
【過量販売解除権について】
訪問販売で,明らかにたくさんの商品を買ってしまった経験はないでしょうか。また,最近では,業者が入れ替わり立ち替わり商品を販売する「次々販売」の消費者被害も増えています。
そこで,今回は,「過量販売解除権(特定商取引法9条2項)」について説明したいと思います。
過量販売解除権とは,業者が,消費者に通常買うはずがない非常に多い量の契約をさせたときに,消費者が契約を解除できるものです。この解除は,契約締結の日から1年以内に行う必要があります。
解除できる条件は以下のとおりです。
(1)訪問販売に当たること
(2)「日常生活において通常必要とされる分量を著しく超える」商品・役務購入であること
※(2)については,2つの場合が規定されています。
①1回の契約による販売量が過量である場合
② ア.過去の購入の累積から,販売行為が,結果的に過量販売契約になることを知りつつ販売を行う場合(買主が今回商品を購入すると,所持量が過剰になることを知りつつ,商品を売る場合),あるいは
イ.既に過量な保有状況の消費者であることを知りつつ販売を行う場合
(買主が既にある商品を購入しすぎていることを知りながら,さらに商品を売る場合)
解除した場合,契約自体が無かったことになり,購入者は,業者に対し,支払った金銭の返還を要求することができます。消費者は,手元に商品がある場合には,当該商品を返還することになります。なお,商品の引取りに関する費用は,事業者の負担となります。
では,先ほどのAさんのケースで,過量販売解除権はどのように活用できるのでしょうか?
Aさんは,1人暮らしなので,短期間に枕11個は明らかに不要です。寝具業者は,Aさんが既に枕を十分に保有していることを知りながら販売を続けているようです。これは,過量販売解除権を使える場面(上記(2)②ア,イ)に当たる可能性が非常に高いと言えます
そこで,Aさんは,寝具業者に対し,一定時期からの売買契約について,過量販売を理由に解除することが考えられます。この解除は,売買契約締結後1年以内に行う必要がありますので,注意が必要です。
解除すれば,Aさんは,寝具業者に対し,(解除された)契約に基づき支払った代金の返還を求めることができます。枕が自宅にある場合には,それらを返還する必要がありますが,新品である必要はありません。また,送料は,寝具業者が負担するので,Aさんが支払う必要はありません。
このようなケース以外でも,過量販売解除権を使える場面は数多くあります。
訪問販売で商品を購入しすぎたと悩んでいる方,まずは一度ご相談ください。