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婚姻費用・財産分与・年金分割

【A子の場合】
A夫とA子は夫婦である。A夫はサラリーマンで,年収は700万円,A子はパートをしており年収は100万円で,A夫の扶養に入っていました。A夫は厚生年金に加入しています。A子は,平成27年1月からA夫と離婚を前提に別居を始めました。2人の間に子どもはいません。
A子名義の財産は,結婚前の預金100万円,A子の親が亡くなったときに相続した現金200万円,結婚後の預金200万円です。A夫名義の財産は,結婚後に購入した自宅(時価2,000万円),結婚後に購入した車(時価100万円),結婚前の預金200万円,結婚後の預金500万円です。

第1 婚姻費用
1 婚姻費用の分担とは
婚姻期間中に婚姻共同生活を維持する生活費用等のことを,「婚姻費用」といいます。夫婦には,互いに協力して扶助する義務があり(民歩752条),夫婦が別居した場合に,収入が低い妻(夫)の生活費として,収入が高い夫(妻)は婚姻費用の分担義務(婚姻費用を支払う義務)を負います。婚姻費用の分担を請求する者を権利者,分担を求められる者を義務者といいます。
義務者は,別居開始時からの婚姻費用を他方に支払う義務があるように思われますが,実務上は,権利者が婚姻費用の請求をしたとき(婚姻費用の分担調停を申し立てたとき)から婚姻費用の支払い義務を生じるとすることが多いようです。これは,別居後何年も経ってから,婚姻費用を請求された場合,義務者がその全部を支払うとするのは酷だという理由によります。
婚姻費用の分担額はどのように決まるのでしょうか?
民法760条では,「夫婦は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めています。裁判所では,夫婦の収入及び子の年齢を基にした算定表を作成,公表しています(「養育費・婚姻費用算定表」といいます。)。
もっとも,別居の原因や婚姻関係の破たんの原因が権利者にアルバありには,婚姻費用の請求が認められないこともあります。
婚姻費用の分担については,当事者同士で話し合い決めることもできますが,それが困難な場合には,裁判所に婚姻費用の分担の調停を申し立てることができます。

2 A子の場合
A子の場合,A子の方が収入が少ないので,A子が権利者となり,A夫に対して,婚姻費用の分担を請求することができます。その場合の額は。裁判所の算定表に基づくと8万円から10万円となります。

第2 財産分与
1 財産分与とは,夫婦が婚姻期間中に協力して得た共有財産を,離婚する際に。または離婚後に分けることです。
財産分与の対象となる財産は,婚姻期間中に夫婦で得た財産に限られます。したがって,婚姻前の貯金や相続によって得た財産は,夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻期間中自己の名で得た財産である特有財産として,夫婦の共有財産に含まれません。
また,夫婦の一方の名義になっている財産であっても,婚姻期間中に夫婦が協力して得た財産といえるのであれば,実質的には共有財産となります。
財産分与の割合は,2分の1と定められることが多いですが,当事者同士の話し合いで,割合を変えることもできますし,「家を妻に,預貯金を夫に」という分与の仕方も,双方の合意があれば可能です。
財産分与は,離婚後に請求することも可能ですが,財産分与の調停及び審判は離婚後2年以内でないと申し立てることはできません(民法768条2項)。

2 A子の場合
A子の婚姻前の預金および相続した現金について,A子の特有財産となり,財産分与の対象に含まれません。他方,夫名義の家や車は,婚姻後に購入したものであり,夫婦で協力して得た財産といえますので,共有財産として財産分与の対象となります。また,A子,A夫の婚姻後の預金についても,財産分与の対象となります。
したがって,財産分与の対象となるのは。夫名義の家(2,000万円),車(100万円),夫婦の婚姻後の預金(合計600万円)です。2分の1ずつで分与すると,1,350万円ずつをお互いに取得することになります。

第3 年金分割
年金分割とは,被用者年金にかかる報酬比例部分の年金額の算定の起訴となる標準報酬等について,夫婦であった者の一方の請求により,分割割合を定め,その定めに基づいて,夫婦であった者の一方の請求により,厚生労働大臣等が,標準報酬等の書いて又は決定を行うという制度です。つまり,標準報酬等の分割を受けると,分割を受けた妻(夫)は,分割を受けた標準報酬等が自分のものになるので,これに応じて算定される老齢厚生年金等の支給を受けることができます。したがって,夫(妻)の年金を半分もらえるというわけではないことに注意が必要です。対象となる年金は,厚生年金,国家公務員共済年金,地方公務員等共済年金及び私立学校教職員共済年金の4種類です。
年金分割をするためには,合意分割と3号分割があります。3号分割は,婚姻期間中の3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を2分の1ずつ、当事者間で分割する制度で,当事者双方の合意はいりません。合意分割について,当事者間で按分の合意をするか,裁判手続で按分割合を定めることが必要です。合意分割については,離婚の調停において扱うこともできますし,年金分割の調停を申し立てることもできます。その際には,年金の情報通知書を年金事務所で取得し,裁判所に提出する必要があります。

第4 さいごに
離婚にともなう財産関係については,複雑になることが多く,弁護士へのご相談をお勧めします。

投稿者 : admin|2015年12月26日

遺産分割について

○遺産分割とは?
誰かが亡くなったとき,被相続人の財産は,すべて相続人に移ります。これを相続といいます。
相続人が複数いる場合,何もなければ遺産は相続人全員の共有状態になりますが、そのままにしておくと,遺産の不動産を勝手に一人の相続人が売却することができないといった不都合が生じることがあります。
遺産分割とは,このような遺産共有状態を解消するための手続をいいます。

〇遺産分割調停を申し立てる前に
まず,遺言書や遺産分割協議書が存在するかどうかを確認してみてください。遺言書ですべての遺産の処分が決まっていたり,遺産分割協議書ですべての遺産について分割されているときには,遺産分割の調停を申し立てることができないからです。
また,遺産分割調停を申し立てる前に,まずは相続人間で話し合ってみてください。いきなり裁判所に調停の申立てをすると,反発を招いたり,不信感が芽生えることがあるからです。
相続人間で話合いがまとまらない場合や,そもそも話合いをすることができない場合,家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

○遺産分割調停の進め方
調停での話合いは,裁判官1人,民間から選任される調停委員2人から構成される調停委員会が,各相続人の考えや言い分を聞き,話合いによる適切な解決に向けて助言やあっせんを行います。

家庭裁判所では,次の①から⑤の順番で遺産分割調停を進めています。
① 相続人の範囲
遺産分割をするためには,亡くなった方は誰であるのか,相続人が誰と誰で,何人いるのかということが明らかになっていなければなりません。これらを明らかにするためには被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本,除籍謄本が必要です。
② 遺産の範囲
原則として,被相続人が亡くなった時点で所有していて,現在も存在するものが,遺産分割の対象となる遺産であり,その範囲を確定します。
③ 遺産の評価
遺産分割の対象となる遺産のうち,不動産等の評価額を確認します。
④ 各相続人の取得額
②で確認し,③で評価した遺産について,法律で定められている一定の割合(「法定相続分」といいます。)に基づいて各相続人の取得額が決まります。ただし,法律の条件を満たす「特別受益」や「寄与分」が認められる場合には,それらを考慮して各相続人の取得額を修正します。特別受益・寄与分については,次回の記事で詳しくご説明する予定です。
⑤ 遺産の分割方法
④の取得額に基づいて,各相続人に分割します。
遺産の分け方は,主に次の3つの方法があります。
ア 現物分割  遺産そのものを分けるというもの
イ 代償分割  一人または複数の相続人が現物を取得し,その現物取得した人がほかの相続人に対し,金銭を支払うというもの
ウ 換価分割  遺産を第三者に売却して,その売却代金を相続人の間で分けるというもの

〇遺産分割の審判
遺産分割の調停が相続人のどちらかの反対でまとまらない場合は,原則として,審判に移行することになります。
審判では,最終的には,家庭裁判所の審判官が判断を下します。
この審判に不服があるときは,さらに高等裁判所へ不服申立てをすることができます。

〇弁護士だからできること
遺産分割は,親族間のトラブルであり,当人同士で交渉し,合意するのは困難な場合が多いでしょう。
また,遺産分割の手続を進めていくにあたっては,遺産の範囲,遺産の評価,特別受益・寄与分といった,弁護士による適切な法的アドバイスを必要とする事柄が少なくありません。
したがって,遺産分割の話合いをこれから始めるというときには,一度弁護士に相談されることをおすすめします。お気軽にお問い合わせください。

以 上

投稿者 : admin|2015年12月19日