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歩行していたら自動車にはねられる交通事故に遭ってしまい,相手の加入する任意保険会社の担当者から賠償額の提示があったが,納得できない

 突然の交通事故は,誰にでも訪れる可能性のある出来事です。事故に遭って,車に傷が付いた,怪我をしてしまった,そんな時,時間は巻き戻らないにしても,せめて被った損害を賠償してほしい,そのように考えるのは,極めて自然なことです。

1 賠償を請求できる「損害」とは
  交通事故の被害者となった場合,自身の受けた被害の態様によって,請求できる損害が変わってきます。
 ⑴ 「物」についての被害
   まず,事故によって自分の「物」に被害を受けた場合。今回のご質問ではあてはまりませんが,典型的には,ご自分の乗っていた車が故障してしまった場合です。この場合には,原則として修理費相当額や,一定期間その物を使えなかったことによる損害,たとえば,修理期間中の代車費用などを,加害者側に請求できます。
 ⑵ 「人」についての被害
   次に,今回のように事故で人が,何らかの怪我を負ってしまった場合。この場合,怪我の治癒のためにかかった治療費,通院交通費,精神的苦痛を埋めるための慰謝料や,怪我で仕事ができなかった期間については休業損害も請求することができます。
   また,ある程度時間が経って,治癒しない傷,すなわち後遺症が残ってしまった場合には,その程度に応じ,それ以降の人生に後遺症を抱えていかなければならないことに対する慰謝料や,後遺症によって働けなくなったことを考慮した逸失利益などが請求できる場合があります。

2 損害賠償額算定の基準について
  損害賠償額の算定には,1で挙げた各損害の費目について金額を計算した後,当事者双方の過失の程度を考慮して,増減を行う必要があります(過失相殺)。しかし,一口に金額を計算する,といっても,怪我や後遺症に対する慰謝料,逸失利益など,金額に換算するのは容易ではありません。
  実際には,事案毎に賠償額の点で不公平が出ないように,賠償額の算定にはいくつかの基準が存在します。
 ⑴ 自賠責基準
   公的な保証となる自賠責保険によって支払われる賠償額の算定基準で,あくまで簡易・迅速な支払いが目的となってくるため,その他の基準に比べると画一的に,低額に抑えられています。
 ⑵ 任意保険会社の基準
   加害者が任意の賠償保険に加入していた場合,保険会社が加害者の代わりに交渉を代行することがあります。そのような場合に保険会社から提示してくる損害賠償の額は,前に挙げた自賠責保険の基準額と,後に述べる裁判基準額の中間となることがほとんどです。任意保険を提供する会社ごとに,内部で処理基準があるようです。
 ⑶ 裁判基準
   最後に,裁判で損害賠償の額を決める場合,裁判所が依って立つと言われている算定の基準があります。費目ごとの算定額としては,これが一番高額となることが多いでしょう。

  これだけ見ると,自賠責や任意保険会社の提示額を受け入れるより,とにかく裁判に持ち込んだ方が良さそうに見えるかもしれません。しかし,現実には,保険会社からの提示額に納得できない,と裁判で争ったら,被害者側の過失が多く認められ,結果的に損をしてしまった,という場合もあるのです。
  提示された損害賠償額に納得できない場合,どのような手段で損害賠償を求めていくのが適切なのか,いくらぐらいが妥当な金額なのか,まずは,一度弁護士に相談してみることをお勧めします。
  最近は任意保険で弁護士費用を負担してくれる特約が付いている場合もありますので,一度,ご自分の入られている保険の契約書類をチェックしてみてはいかがでしょうか。

投稿者 : admin|2017年7月2日

マンションを貸しているが賃料を払ってもらえないので,部屋を明け渡してもらいたい。

 「マンションを貸しているが賃料を払ってもらえないので,部屋を明け渡してもらいたい。」,よくある相談です。
 ただ,賃料を支払ってもらえない間でも,賃貸借契約が継続している限りは,賃借人は当該貸室を使用収益する権利を有しているため,賃料の未払いだけでは部屋を明け渡してもらうことはできません。
 では,どうすればいいのか,ということですが,賃貸借契約を解除すればよいのです。
 具体的には,未払いとなっている賃料を相当期間内に支払うように内容証明郵便にて催促をします。相当期間内に支払いがない場合には,内容証明郵便にて賃貸借契約を解除する旨の通知を送るというのが一般的です。もっとも,1通の通知書をもって,未払賃料の支払いを催促し,支払いがなかった場合には賃貸借契約を解除することを合わせて通知するということも可能です。ただ,賃料の未払い期間が1カ月程度ですと,未だ信頼関係が破壊されていないとして解除が認められないこともありますので注意が必要です。
 賃貸借契約を解除したことによって,賃借人が任意で退去してくれればよいのですが,賃借人は賃料も払えなかったわけですから当然引っ越しもままならないことが多く,居座られることの方が多いと思います。
こうなった場合に,「賃借人が留守にしている間に勝手に鍵を変えていいですか。」,「合鍵で入って荷物を出してもいいですか。」,という質問を時折耳にしますが,これはダメです。
 裁判所に,部屋の明け渡しを求める訴訟を提起し,判決を得て,強制執行をする必要があります。
 訴訟を提起するに際しては,未払賃料の支払いと,賃貸借契約解除後の賃料相当額の損害金の支払いを求めるのを忘れないようにしましょう。
 訴訟を提起し,強制執行をして明け渡し実現しようとすると相当期間が必要となります。
 「内容証明郵便の書き方を知りたい。」,「解除したけど出ていってもらえない。」,「裁判をしたいけどどうしたらいいかわからない。」どんな場面でも構いません。行き詰ったら弁護士に相談をされてみてはいかがでしょうか。

投稿者 : admin|2017年6月10日

過失相殺・後遺症などの点で,保険会社の提示額に納得できない

 ある日,突然に降りかかってくる可能性のある交通事故。今回は,交通事故の損害賠償が争われる際に特に問題になることの多い「過失相殺」と「後遺症」についてのお話です。

1 過失相殺について
 ⑴ 過失相殺とは
   交通事故は,多くの場合様々な要因が重なり合って発生します。交通事故の被害に遭ったとして加害者に損害賠償を求めて裁判を起こした場合でも,被害者の側に何らかの落ち度(過失)が認められるときは,裁判所は損害賠償の額をその過失割合に応じて減額することがあります。これが過失相殺です。
 ⑵ 過失相殺はどのように判断されるか
   事故の当事者それぞれにどれだけの過失があったのかと言われても,それを客観的に数値化するのは困難です。そこで,裁判実務や保険会社との交渉においては,事故の類型毎に整理された過失相殺の認定基準が存在します(『別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準(東京地裁民事交通訴訟研究会編)』参照)。事案の種類毎に,どのような事情があればどちらに何%の過失があると考えられるのかがまとめられています。
   しかし,個別の事故がどの類型にあてはまるのか,そして事件の状況から過失が認められるのかは,現実には当事者間で見解の相違が生じやすい部分です。保険会社の提示する過失割合に納得できない場合には,過去の判例等も踏まえ,主張を戦わせることにもなるでしょう。

2 後遺症について
 ⑴ 後遺症とは
   事故で身体に怪我を負った場合,通常はその怪我は時間と共に治癒していきます。しかし,これ以上は大幅な回復が望めないという状態になったとき,その時点をもって「症状が固定した」とされ,その時点で残った傷害が「後遺症」となります。
 ⑵ 後遺症を原因とする損害賠償
   ⑴で述べた症状固定が認められるまでは,被害者としては治療のための費用や入通院費,休業損害,傷害慰謝料等を損害として請求できます。しかし,症状固定日以後は,治療をしても改善が見込めないことが明らかなわけですから,治療費などは請求できません。症状固定日以後は,後遺症が残ってしまったことによる逸失利益,後遺症についての慰謝料などを損害として請求することになります。
 ⑶ 後遺症の認定
   交通事故事案において,後遺症は1級から14級までの等級に分類されます。等級毎に慰謝料の額,逸失利益の額はおよそ定まっていますから,保険会社との間では,そもそもその症状が後遺症として認められるのか,認められたとして何級にあたるのかが争点になることが多いです。
   交通事故後遺症の等級判断は,医師がただちに「何級」と判断してくれるわけではありません。医師の診断書から見た症状や,レントゲン等の画像に表れた客観的症状などを資料に,損害保険料率算出機構が判断します。等級の基準も単なる文章で定められている以上,どの文言にあたる症状なのか,争いになりやすいというわけです。

 これまで述べたように,過失相殺にしても,後遺症にしても,争いが頻繁に生じるところです。まずは一度弁護士に相談してみることをお勧めします。最近は任意保険で弁護士費用を負担してくれる特約が付いている場合もありますので,一度,ご自身の加入されている保険の約款をチェックしてみてはいかがでしょうか。

投稿者 : admin|2016年11月15日

中古で購入した家が白アリ被害に遭っていた

Aさんは,半年前に不動産業者B社から築40年の中古木造住宅を購入しました。ところが,白アリの調査を行ったところ,Aさん宅床下では土台や柱が白アリに食い荒らされており,内部が空洞になっている箇所もあることが判明しました。建築士に見てもらったところ,地震が起きれば家が倒壊する可能性があることも分かりました。

Aさんは,B社に対して法律上どのような請求ができるのでしょうか。

 

1 瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)の追及

民法では,売買契約の対象となった建物に「隠れた瑕疵(かし)」が存在していた場合,売主は,買主に対して瑕疵担保責任を負うことが定められています(民法570条)。

「瑕疵」とは,目的物が通常有すべき品質・性能を有さないことを言います。

「隠れた」とは,①一般人が取引上要求される一般的な注意を用いても発見できず,かつ,②買主が知らず,知り得なかったことを言います。

今回の事例では,土台や柱が白アリ被害に遭っているAさん宅は,家屋として通常有すべき品質・性能を有していませんでした。

また,①床下で起きていた白アリ被害を発見することは一般人にとっては困難ですし,かつ,②Aさんも床下の白アリ被害を全く知らず,知り得ませんでした。

したがって,Aさんとしては,B社に対して瑕疵担保責任を追及することが考えられます。

 

2 瑕疵担保責任の内容

売主が買主に対して瑕疵担保責任を負う場合,買主は,①契約の解除または②損害賠償請求を行うことができます(民法570条本文・566条1項)。

今回の事例でも,Aさんは,①売買契約を解除し,B社に対して購入代金の返還を求めることが可能です。

また,Aさんは,②売買契約を解除せずに,B社に対し,白アリ駆除代金や家の修理代金などを支払うよう損害賠償請求をすることも考えられます。

白アリ被害の程度やB社の対応などを踏まえ,いずれの方法を選択するのか慎重に検討することが必要です。

 

3 瑕疵担保責任に関する注意点

瑕疵担保責任の追及は,買主が瑕疵の存在を知った時から1年以内に行わなければなりません(民法570条本文・566条3項)。

また,買主が瑕疵の存在に気付いていなくても,建物の引渡しを受けた時から10年が経過すると,瑕疵担保責任を追及する権利は時効によって消滅する可能性があります。この時効期間は,売買が「商行為」に当たる場合は5年とされますし,売買契約締結時に約款によって1年または2年に短縮されていることも多いです(売主の瑕疵担保責任が免除されていることもあります。)。

そのため,買主としては,購入した建物の品質・性能に疑いがあれば早期に検査し,瑕疵を発見すれば直ちに対応することが必要です。

 

4 弁護士からのおすすめ

瑕疵担保責任を追及する場合,建物の欠陥が「瑕疵」に当たるのか,どのような支出・損害について賠償を求めることができるのかなど,法律的な判断が求められます。

また,瑕疵担保責任を追及できる時期は限定されていますが,新築建物を購入した場合には要件を満たせば建物の引渡しを受けた時から10年間権利を行使することができるなど(品確法),例外的に権利行使ができる場合もあります。

さらに,瑕疵担保責任の追及が難しくても,債務不履行責任や不法行為責任などを追及できる場合もあります。

建物の欠陥に関する紛争に対応するには専門的な知識が不可欠なので,すぐに弁護士に相談することをお勧めします。

当事務所には建築問題に詳しい弁護士が多数所属しています。お困りの際は当事務所にご相談ください。

投稿者 : admin|2016年10月12日

壁にヒビが入った。家が傾いている。雨漏りがする。建て付けが悪い。

 「一生に一度の買い物」と言われるマイホームの購入。いざ入居してみたところ、壁にヒビが入った、家が傾いている、雨漏りがする、建て付けが悪い、こんな問題に直面して当事務所に法律相談にいらっしゃる方は少なくありません。そこで、今回は、このような建築の法律問題についてお話したいと思います。

1 欠陥住宅と未完成建物との違い
 建物を建築する場合、通常,請負契約を締結します。請負契約とは、ある仕事の完成を目的とし、その結果に対して注文者が報酬を支払うという契約です(民法632条)。仕事が完成しない間は、原則として注文者が請負人に報酬の全額を支払う必要はありません。ただし,工事内容が可分であり,完成した部分だけでも注文者に利益があるときは,完成部分に係る請負代金を支払う場合がありますので注意してください。
 他方、いったん建物が完成し引渡しが行われると、建物に欠陥があっても契約を解除することができなくなり、欠陥は瑕疵担保責任によって瑕疵修補か損害賠償で解決されるべき問題となります。
 つまり、壁にヒビが入った等の欠陥住宅の場合、どのような法的手段を採りうるかは、
建物が完成しているかどうかというのがポイントになります。
 この点、裁判所では、予定された工程の最後まで工事が行われたか否かによって、工事の完成の有無を判断しています。
 以上の話をまとめると,次のように考えることができるでしょう。
  ① 予定工程未了=建物が未完成 → 報酬支払義務なし(例外あり)・契約解除可能
  ② 予定工程終了=建物が完成 → 報酬支払義務あり・契約解除不可能 → 瑕疵修補・損害賠償

2 どのような基準で瑕疵を判断するのか
 それでは,「瑕疵」とはどのようなことをいうのでしょうか。
 この点,裁判所では,目的物が契約に定められた性質を完全に具有しないことをいうと考えられています。
 この考え方を前提にすると,瑕疵の有無は,契約での合意内容が重視されますから,契約書や設計図書といった客観的資料が重要な証拠となります。また,建物を建築する場合,建築基準法等の法令を遵守する必要がありますので,これらの法令に適合しているかどうかという点も重要になります。

3 損害賠償の範囲
 では,瑕疵を理由に損害賠償を請求する場合,どのような損害について認められているのでしょうか。
 工事そのものに関係する損害としては,修補費用,変更・追加工事費用,調査費用等が損害として認められています。また,代替建物賃料等が損害として認められる場合もあります。
 冒頭でも申し上げたとおり,「一生に一度の買い物」であるマイホームの購入に際し,その建物に瑕疵があったとなれば,かなりの精神的苦痛が生じることもあるでしょう。しかしながら,建物の瑕疵を理由とする損害賠償の場合,修補などが済んで財産的損害が回復されれば,精神的な損害についても回復されると一般的には考えられています。したがって,このような場合,精神的損害に対する賠償(慰謝料)が認められるケースはそれほど多くありません。

4 最後に
 以上のとおり,建物の法律問題については,法的にも難解であるのみならず,建築の専門用語や設計図書についての専門的な知識が必要なことが少なくありませんので,何かお悩みをお抱えの方は,建築に関する知識を有する弁護士に相談されることをおすすめします。当事務所でも,年間100件を超える建築に関する法律相談を行っていますので,まずはお気軽にお問い合わせください。

投稿者 : admin|2016年9月3日

貸したお金が返ってこないのですが,どうしたらいいですか。

金額の多い少ないは別にしてよくある相談ですね。
貸したお金を返してもらう権利を貸金返還請求権と呼びますが,返す約束をして,お金を渡せば,返還時期が到来することで貸金返還請求権を行使できます。
実際に権利を行使する方法としては,⑴内容証明郵便で督促をする方法,⑵支払督促を申し立てる方法,⑶裁判を起こす方法が考えられます。
 
⑴内容証明郵便で督促する方法
①いつ幾らを貸したのか,②いつまでに返す約束だったのか,③約束の期限を過ぎても返済がないので内容証明郵便が借主の手元に届いてから何日以内に貸主名義の口座に振り込むように,という内容を記載した書面を送るのが一般的です。
郵便局を通じて行うものですので,簡単で費用の掛からない方法といえますが,あくまで借主の自発的な返済を促すにすぎませんので,内容証明郵便で定めた期限までに返済がなくても強制的に取り立てることはできません。

⑵支払督促を申し立てる方法
相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に,申立書を提出する方法で行います。
裁判所が申立書を相手方に郵送しますが,相手方に届いた日の翌日から2週間間,相手方は支払督促の内容に異議を申し立てることができます。
異議が出なかった場合には,仮執行宣言の申立てを行うことで相手方の負う貸金返還義務を強制執行によって実現することが可能となります(相手方の負う貸金返還義務を強制執行によって実現することを「執行力」と呼んでいます。)。
相手方が異議を述べない場合には,速やかに執行力を手に入れることが出来る点で優れています。
もっとも,異議申立期間内に異議が出されてしまうと,裁判手続に移行することになります。この場合には,裁判を起こす場合と同じ手続になります。
相手方の住所地が遠方であった場合に異議が出されてしまうと,遠方の裁判所まで通わなければなくなりますので,異議を出す可能性があるかを見極める必要があります。

⑶裁判を起こす方法
相手方の住所地あるいはご自身の住所地のいずれかを管轄する裁判所に訴状を提出する方法によって行います。訴状は,請求する金額が140万円以下の場合には簡易裁判所に,140万円を超える場合には地方裁判所に提出することになります。
裁判所は,訴状とともに第1回の期日の呼出状を相手方に送達します。
第1回期日までに,相手方の言い分を記載した答弁書が提出されます。
その後は,事案にもよりますが1か月から1か月半程度の間隔を空けて期日が開かれます。期日ではお互いの言い分を記載した準備書面のやり取りを行います。
その上で,証人や当事者の尋問が行われ,その後に判決が出されます。
勝訴判決の場合には,貸金返還義務を強制執行によって実現することができます。
また,「和解」で終了することも多いのですが,その場合,仮に,和解後に支払が滞った場合にも,強制執行は可能です。
時間がかかることにはなりますが,執行力が得られる点や「和解」という形で柔軟な解決ができるというメリットはあります。

以上をまとめると,内容証明郵便を送っても返済がなければ裁判を起こすあるいは支払督促を申し立てるということになります。
裁判や支払督促を行う際には,当該事案にはどちらの手続が適しているか,訴状あるいは申立書の記載,証拠の選別という問題があります。
また,本題とは横道にそれますが,時効という言葉を聞いたことがあると思います。時効期間が満了し,かつ,時効を主張する意思表示がされてしまうと貸金返還請求権は消滅してしまいますので,時効期間は何年か,時効期間は満了しているか,等を検討する必要もあります。
貸したお金が返してもらえないという場合には,弁護士に一度相談されてみてはいかがでしょうか。

投稿者 : admin|2016年8月21日

ある日,突然解雇されました。どうしたらよいでしょうか。

 突然解雇されてしまったとき,どう対処するべきでしょうか。
1 会社に対して解雇理由書の交付を求める
  解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,無効となります(労働契約法16条)。
  解雇には,普通解雇,整理解雇,懲戒解雇の3種類があり,それぞれの解雇で,解雇の有効性を判断する事情,解雇によって生じる効果(例えば,懲戒解雇では退職金が支給されないことが多いです。)が異なります。
  したがって,まずは,会社に対して,どのような理由で解雇されたのかを明らかにするよう求めましょう。
  なお,会社は,従業員の求めがあった場合,解雇理由を記載した証明書を交付する義務があります(労働基準法22条)。
  会社は後から解雇理由を追加したり変更したりすることがありますので,早い段階で具体的な解雇理由を明らかにした書面の交付を求めるようにしてください。
2 証拠を収集する
  会社から交付された書面(通知書,労働契約書,就業規則等)は,必ず保管しておくようにしましょう。
  また,会社での出来事や上司から言われたことなどを詳細なメモや日記として残しておくと良いでしょう。
3 辞表を提出したり退職届や退職の同意書に署名や捺印をしたりしない
  会社が辞表の提出や退職届や退職の同意書への署名や捺印を求めてくることがありますが,納得しないまま応じてはなりません。
  退職届や退職の同意書に署名や捺印をしてしまうと,解雇を争うことが難しくなります。
  万が一,納得しないまま辞表の提出や退職の同意書への署名捺印をしてしまった場合には,会社に対し,辞表や退職の同意書を撤回する旨を,内容証明郵便等で通知してください。
4 失業給付は仮給付として受ける
  解雇の有効性を争っていても雇用保険から失業給付を受けることはできます。
  しかし,失業給付を受けてしまうと,裁判所からは解雇を認めたと判断されかねません。
  したがって,仮給付(復職して,復職までの賃金が支払われた場合,受給した給付を返還する)として失業給付を受けてください。

 以上は一般論であり,具体的なご事情によってアドバイスも異なります。
 突然解雇されてしまったときは,お一人で悩まず,当事務所までお気軽にご相談ください。

投稿者 : admin|2016年8月3日

契約社員の契約の更新について

1 契約社員の「雇止め」とは?
同じ会社で契約社員として何年も働いてきたAさん。会社から,「次は契約の更新はしません。」と告げられてしまいました。Aさんは,この会社で働き続けることはできないのでしょうか?
そもそも「契約社員」とは,一般的には,有期雇用契約に基づきフルタイムで勤務する労働者を指すことが多く,期間社員と呼ばれることもあります。そして,この有期雇用契約の期間満了に際し,会社から次期の契約更新を拒絶し,契約を終了させることを「雇止め(更新拒絶)」と言います。
2 雇止めの制限(労働契約法第19条)
有期雇用契約では,契約期間の満了により契約が終了するので,会社も労働者も,特に理由なく次期の契約更新を拒絶することができるのが原則です。しかし,有期雇用契約が広く利用されている我が国の労働環境において,このような原則を貫くと,労働者の地位は非常に不安定なものとなりますし,契約更新を期待していた労働者にとっては,突如生活の糧を失うことにもなりかねません。
そこで,裁判所は,契約期間が満了した場合における契約更新の拒絶につき,制限を加えることで,労働者を保護してきました。そして,このような判例法理は,平成24年に,労働契約法(労契法)第19条として法律化されました。したがって,労契法第19条の要件を満たせば,労働者は,従前の労働条件と同一の条件で,働き続けることができるのです。
労契法第19条の要件を簡単に説明しますと,
①-㋐ 過去に反復して更新された有期雇用契約であり,雇止めをすることが,無期雇用契約の解雇と社会通念上同視できること
又は,
①-㋑ 有期雇用契約の満了時において,契約が更新されるものと労働者が期待することにつき合理的な理由があること
② 労働者が会社に対し,①の契約期間が満了する日までに契約更新の申込みをするか,又は,①の契約期間満了後,遅滞なく有期雇用契約の申込みをすること
③ 会社の②の申込みに対する拒絶が,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められないこと
となります。
①から③が全て認められる場合には,会社と労働者との間に,有期労働契約が成立することになるので,労働者は,会社で働き続けることができます。
3 Aさんのケースでは
このように考えると,契約社員のAさんは,同じ会社で何年も働いており,次期の契約の更新がない旨を会社から告げられているので,今まで反復して有期雇用契約の更新がされてきた可能性があります(①-㋐)。他の要件も満たすのであれば,Aさんは会社で働き続けることができることになります。
4 最後に
要件を満たすかどうかは,専門家でも判断が分かれる難しい問題です。雇止め等の労働問題でお悩みの方は,ぜひ一度,当事務所までご相談ください。

投稿者 : admin|2016年6月30日

賃金や残業代を請求できないか?

1 賃金とは
労働基準法によれば,「賃金」とは,賃金,給料,手当,賞与その他名称の如何を問わず,労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます。賃金は,原則として,通貨で,直接労働者に,その全額を支払われなければなりません。また,賃金は,毎月1回以上,一定の期日を定めて支払われなければなりません。さらに,最低賃金法によれば,使用者は,労働者に対し,原則として,最低賃金以上の賃金を支払わなければならず,最低賃金額に達しない賃金を定める労働契約はその部分について無効であり,最低賃金と同様の賃金の定めをしたものとみなされます。
2 労働時間と残業
  労働基準法上の労働時間は,原則として,休憩時間を除いて週40時間以内かつ1日8時間以内です。また,原則として,週1日の休日が与えられなければなりません。法律の定めより長い労働時間を定めた就業規則は無効です。
労働基準法上の労働時間を超えて労働した場合,次の割増率を割り増しした賃金を支払うことになっています。
            深夜以外   深夜(原則午後10時~午前5時)
60時間以内の残業
     時間外労働    25%       50%
     休日労働    35%       60%
  60時間を超える残業    50%       75%
3 賃金・残業代の請求
  働いたのに賃金や残業代が支払われない場合,労働契約に基づいて,賃金や残業代の請求をすることができます。また,裁判所は,残業代を支払わない使用者に対し,残業代と同一額の付加金の支払を命じることができますので,労働者側としては,残業代だけでなく付加金の請求もすることができます。
残業代は,大ざっぱにいえば,次の式により計算されます。
「労働時間」×「時間当たりの賃金単価」×上記の割増率
時間当たりの賃金については雇用契約書や就業規則など,労働時間についてはタイムカードや日誌などの資料が証拠となります。
  賃金や残業代を請求した場合,使用者側は,「残業させていない」「働いた時間はもっと短い」といった主張をすることがよくあります。最高裁判所によれば,労働基準法上の労働時間とは,「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。そこで,労働者側では,使用者の指揮命令下に置かれていたことを根拠づける事実関係を具体的に主張し,証明していくことになります。
  なお,賃金や残業代の請求権は,2年で時効によって消滅してしまいますので,ご注意下さい。
4 訴訟と労働審判
  残業代の請求は,訴訟を起こしてすることもできますが,労働審判によってすることもできます。労働審判では,裁判官1名に労働関係の専門家2名が加わって労働審判委員会を構成し,原則として3回以内の期日で,調停(話し合い)や審判(労働審判委員会の判断)をすることになっています。このように,早く終わったり,話し合いなどで柔軟に解決できるメリットがありますが,複雑な事件など労働審判での解決が難しい事件もありますので,どのような場合でも労働審判がお勧めであるとはいえません。
5 最後に
  これまで,法律の大まかなところだけを述べてきました。しかし,賃金や残業代の問題については,この他にも様々な法律の規定があったり,就業規則に法律と異なる定めがあることもあります。実際に残業代を請求する際には,弁護士に相談されることをお勧めします。

投稿者 : admin|2016年5月6日

寄与分・特別受益について

今回は相続に関するお話です。相続の際に耳にする「寄与分」や「特別受益」とは,一体どのようなものなのでしょうか?

1 前提として
誰かが亡くなったときに,複数の相続人(共同相続人)がいたとします。遺言がない場合は,通常ですと,亡くなった方(被相続人)の残した全ての財産を,共同相続人が,法律で定められた割合(法定相続分)にしたがって相続することになります。

2 寄与分(民法904条の2)
しかし,共同相続人の中に,被相続人の療養看護や事業に関する労務の提供等の特別の貢献(寄与)をしてきた者(寄与者)がおり,その特別の寄与によって,被相続人の財産が維持され,又は増加があったと認められる場合には,寄与者は,その特別の寄与に相当する額(寄与分)を,被相続人の財産からもらうことができるのです。したがって,被相続人の財産から,寄与分を差し引いた財産を相続財産(相続人が相続することができる被相続人の財産)として,寄与者を含めた共同相続人間で,法定相続分にしたがって分けることになります。
それでは,どのような行為が「特別の寄与」として認められるのでしょう?特別の寄与と認められるためには,寄与者と被相続人との身分関係に照らし,通常期待される程度を超える行為を行ったことが必要となります。例えば,通院の際の送迎,老人食の準備,子が老親に送金する少額の小遣い等は,親族が当然なすべき配慮として通常期待される行為であると考えられ,特別の寄与とは認められないことが多いと思われます。
「寄与分」をいくらと換算するかは,まずは共同相続人間の協議により定めるものとされていますが,このような協議ができない場合や,協議がまとまらなかった場合には,家庭裁判所が寄与分を定めることになります。

3 特別受益(903条)
続いて,特別受益のお話に入ります。前提は1のとおりですが,共同相続人の中に,被相続人から遺言による贈与(遺贈)を受けたり,又は婚姻や生計の資本(例えば,結婚の際の持参金や居住用の不動産)として過去に贈与を受けたことがあった相続人がいたとしましょう。これらの遺贈や贈与を受けた相続人(特別受益者)は,他の相続人よりも利益を得ているといえます。そこで,共同相続人間の衡平を図るため,特別受益者に対し贈与されたこれらの財産も,被相続人の財産であるとみなし,特別受益者を含めた共同相続人間で,法定相続分にしたがって分けることになるのです。
特別受益にあたる遺贈や贈与であるといえるかどうかは,「遺産の前渡し」と評価できる程度であるといえるかによります。そのため,通常ですと,金額的に少額の場合には,特別受益にあたらないとされることが多いようです。
この制度は,既に贈与されてしまっている財産も相続財産とみなした上で,共同相続人間で分けることになるので,計算は複雑になることがしばしばです。

4 まとめ
寄与分にしても特別受益にしても,そもそも「特別の寄与」や「特別受益」といえるのか,「特別の寄与」であるとするといくらに換算されるのか等々の問題があり,共同相続人間で,正確な範囲や額を決めることは難しいと思われます。後々の紛争を防ぐためにも,ぜひ一度,弁護士にご相談ください。

投稿者 : admin|2016年4月21日